HRエグゼクティブコンソーシアム代表の楠田祐氏と、アジャイルHR代表取締役 松丘啓司の対談をお届けします。

 

<前半>

楠田:さて、テーマは「分散と自律」。2020年の2月ぐらいからコロナということで一斉に在宅勤務をせざるを得なくなった企業が多くありましたが、もう丸2年経ちます。

 

人によっては在宅勤務の方が効率よく仕事できる、パフォーマンスも高くなりそうだと言います。言われたことはできるかもしれないけど、果たして自律できていくのかなというと、私は少し課題感を持っています。

 

「分散と自律」というテーマについてコロナ禍の間に少し議論をし、この対談をご覧の皆さんも何か自社のことを考えていただくといいのではないかと思います。

 

リモートワークで動機づけが不足する

 

松丘:リモートワークになって、仕事の効率が上がる部分はあると思いますし、業務上のコミュニケーションだけであればオンラインツールを使ってできると思うのですが、何が一番不足しているかというと、動機づけではないかなと思いますね。

 

人は仕事する際、どのように動機づけられているのかといいますと、自分で自分自身を動機づけることよりも、実は職場の上司、同僚、あるいはその会社のカルチャーなどによって動機づけられていることが多いので、そこがかなり不足してしまう可能性があると思います。

 

楠田:日本の大企業の職場を訪問すると、大部屋で、目の前にも人がいて、右にも左にも人がいて、後ろには後ろ向きで仕事をしている人がいてと、大部屋の中にいると、日本的な動機づけというものが、あったかもしれません。

 

私はアメリカ合衆国に行くのが好きなので、遊びに行ったついでに企業の訪問も何回かしたことありますが、決して大部屋ではなくて、パーティションで区切られていたり、みんな部屋が違っていたりして、社員がいるのかいないのかよくわからないので、自律しているのだろうなと見ていました。

アメリカの人たちの働きぶりの動機づけは日本人のものとは少し違うのかなと思いますね。

松丘:日本は周りを気にしますしね。

 

楠田:日本人は確かにそうですね。隣の家が4Kテレビ買った、だからうちも買おうというのがありますから。

 

1on1は「自律」とセット

 

松丘:公平でなければいけないということをすごい気にしますよね。アメリカでは、通常の働き方はパーティションの中かもしれませんが、やはり1on1の時間を取ってコミュニケーションをしたりするところはかなり違いますね。

 

楠田:1on1はこのコロナ禍で日本でも始めた企業、頻繁に行うようになった企業は結構多いとよく耳にします。ただやはり、やりすぎるとマンネリ化してきて、重箱の隅をつつくようになり、1on1というより1wayみたいになってきているということも聞きます。

 

部下のキャリアのためのサポートも考えたときに、部下の自律や学びも一緒に何か議論できると、自律する方向、つまり上司から部下に対しての動機づけができるのではと思いました。

 

おそらく動機づけというのは、対話の中から作り出すしかできないのではないでしょうか?

 

松丘:本当にそうですよね。自分で自分のモチベーションを上げろと言われても、そういうのができる人は非常に限られていますよね。だから、1on1は基本的には自律とセットです。

 

もし自律しないで、会社に依存している人だと、目標や仕事を与えて、管理しないと恐らくマネジメントはできないですが、そういう進捗管理ではなく、本人が自律的にこうしたいと十分に考えて行動するから、ではこんな支援をしよう、ということを上司側もできるようになります。

 

ただ問題は最初から自律している人は結構少ないので、いかに自律させるかを意識して対応していくことが大事なのかなと思います。

 

楠田:メンバーシップ型からジョブ型に変えると自律しそうな雰囲気があって、自律させたいからジョブ型を入れようという論調もあるようですが、ステイホームの中でメンバーシップ型をやめてジョブ型にすればみんな自律しますか?

松丘:それは少し違うような気がしますね。ジョブ型と言っても、あなたの役割はこれです。これがあなたの目標です。といった形で与えられるのだとすると、自律とはなかなか言えないのではないでしょうか。

 

楠田:おっしゃる通りですね。ちょうど松丘さんも私も、現在進行形だった90年代、自律をテーマにしたセミナーがたくさんありましたよね。

 

97年の山一井証券の自主廃業や、北海道拓殖銀行など大企業も潰れてしまう等、会社はキャリアをもう保証できないということから自律のセミナーがありましたが、当時の若年層が今45歳以上になって希望退職制度の対象になってしまっています。

 

結局自律していなかったということです。当時のセミナーは一体何だったのかなと思いますね。

 

松丘:年功序列・終身雇用での固定費などの給与カーブをもっと変動費化するとか、成果主義的なことを入れていくための言い訳あるいは理屈だったのではと思いますね。実際は自律を促すようなことは、それ以降されていません。

 

楠田:ということは、今ここで自律について真剣に議論して、何か仕組みを入れてカルチャーを作っておかないと、2040年、再び希望退職制度が行われてしまうのではないかな、となりますよね。コロナ世代の人たちは自律できなかったといったように。

 

松丘:もっと早いのではないでしょうか?時代が早くなっていますから。

 

楠田:2030年ぐらい、あと10年ぐらいでしょうか?だとするともっとスピーディーに自律できるように本当にやらないといけないですね。

 

1on1とif-thenプラニング

 

楠田:if-thenプランニングという目標達成の考え方があります。if-thenプランニング、いいなと思って私もやってみました。

 

朝起きたら歯を磨くとか、お風呂から出たら牛乳を飲むとか、何かをしたら何をするというのが、最初は意識的にやるのでしょうが最後は無意識になります。

 

例えばこの近年であれば、店内に入るときはアルコールで消毒してから入らなければならない。でも今は意識的に、アルコールで消毒なんて嫌だな、と思う人はいなくて、無意識にやっていますよね。

 

だから、最初意識的に何かをしたときに何をするっていうことを決めておくことによって、それが習慣化してくると無意識になる、ということを考えてみたらいいのではないかなと思っています。

 

例えば私はステイホームになって以降、朝6時に起きますが、朝9時からセミナーがあることが多いので、6時から2時間くらいは読書しています。朝起きたらセミナー前に本を読む。もちろん読まないときもありますが、そういう形にすると、結構本を読める。

 

通勤していた時は電車で本を読む時間なんかないと思っていたのですが、通勤時間が無くなったということは可能ですよね。

 

まさにif-thenプランニングの考え方だと思います。雇用されている一人ひとりが、上司と部下で話し合いながら、“君はどうやってif-thenプランニングで、何をいつ学ぶの?“、”こんなのを学んでいます“というラーニングのお互いのシェア・対話を1on1でした方が、20年後に大きく差がつくと思います。10年後かもしれない。

 

松丘:そうでしょうね。ただ、こうしたらこうしようっていうのを、自分で決めることはなかなか難しいと思います。結局そのきっかけは基本的には経験学習ですよね。ただ、経験学習は1人で行うとすごく難しいから、上司がちゃんと話し相手になることが必要です。

 

楠田:本を読んでいます、どんな本なのか、哲学の本とその本を読んで何を気づいたのか、それの中で自分の仕事で何か役立ちそうなことあったのか、その本には類似の本もあるのか、それは何百年ぐらい前の人が書いたのかな、その本を読んでもっと後世の人でも読んで参考になった人がいそうだね、といったように、どんどんブレイクダウンしていくといいかもしれないですね。

 

If-thenプランニングにもありましたが、コロンビアビジネススクールのモチベーションサイエンスセンターが、いわゆる経験学習を提唱しています。元マサチューセッツ工科大学教授のピーター・センゲが提唱した『学習する組織』という本を98年ごろ読みました。すごいと思いましたが、結局日本ではほとんど何もおこりませんでしたね。

 

日本ではどうして何も起きないのでしょうか。やはり、真面目に働いてれば出世できるんだ、会社が保証してくれるんだ、と思っている人が多いのもあると思いますね。(後半へ続く)