更新日:2022-06-01

 OKRの基本的考え方の1つに「アンビシャス(野心的)」があります。何のために高い目標を設定するのか、どれくらい高い目標である必要があるか、といった点について、以下に解説します。

 

  1. OKRの考え方

③ アンビシャス

 

 OKRにおいては、簡単には達成できない野心的な目標を立てることが推奨されます。ただし、「OKR基礎講座③」でも述べたように、OKRは主体的に設定したゴール、つまり「やりたい目標」であることが前提です。MBOの個人目標をもっと高めることを求めているのではけっしてありません。

 

◆高い目標を設定する理由

 

 OKRにおいて高い目標の設定を推奨することには、以下のような理由があります。

 

1) 大きな成果を生み出す

 当然ながら、高い目標を設定しただけで、成果も自動的に大きくなるわけではありませんが、「やりたい」と願ってゴール設定をすることによって、自発的な努力が引き出されることが知られています(逆に、「やりなさい」と上から目標を与えられた場合には、その目標を達成するのに最低限の努力しか費やされない)。

 

 また、高い目標を達成するためには、自分だけの努力ではなく社内外の協力を得たり、これまでにはない発想が求められたりすることも含めて、より大きな成果が生み出される可能性が高められます。

 

2) 成長を促す

 野心的な高い目標を達成しようとすると、これまでの業務の延長線上ではない、未知の領域へのチャレンジが求められます。同じような経験を繰り返しても得られる学びは限られていますが、未知の経験からの学びは成長のスピードを促進します。

 

3) 視座を高める

 大きな成果を念頭において目標を立てることによって、視座が高められます。従業員全員が、毎年数パーセントの売上増でよいと思っている会社では数パーセントの成長しかできなくなりますが、全員が高い視座を持つことができれば会社を飛躍させられる可能性が高まります。

 

◆野心的な目標に関する疑問

 

 「アンビシャス」というOKRの考え方に関して、次のような疑問がしばしばあげられます。

 

  • どの程度の高さが適当か

 グーグルでは「OKRのスィートスポットは60%~70%」と言われています。つまり、会心の一打が出た時に、目標の60%~70%程度の達成率になるくらいのレベル感がよいということです。言い方を換えると、これまでのストレッチ目標の1.5倍くらいを目途にするのがよいでしょう。

 

 それ以上になるとゴールまでの距離が遠すぎて、息切れしてしまう恐れがあります。ストレッチ目標の1.5倍であれば、足りない50パーセントを積み上げるためのアイデアを考えることができるレベルです。

 

  • 業務や職種によっては野心的な目標を立てられない

 たとえば、事務処理を正確に行うことが求められる業務に携わっているメンバーは、野心的な目標を立てようがない、といった声がしばしば聞かれます。そのような声が出てくるのはMBOにおける個人別の目標設定の発想が染みついているからだと思われます。OKRでは上位OKRに貢献する目標設定を行うため、上位のOKRがメンバーを鼓舞するような野心的なOKRになっていれば、メンバーはそれに貢献するOKRを立てればよいのです。

 

 そうは言っても、メンバーの中には最速で成長したい人もいれば、自分のペースでじっくりと成長したいスローキャリア志向の人もいるでしょう。OKRは主体性が大前提になるため、本人のキャリア志向が反映されるのは当然です。ただし、1on1の場で上司と将来キャリアについてよく話し合って、共有されていることが必要です。

 

  • 達成度の基準がバラバラだと評価ができなくなるのではないか

「OKRの達成度を人事評価に用いない」というのがOKRの大原則です。それをやってしまうと、達成できそうな目標ばかりが立てられたり、高い目標に挑戦した人が評価されなかったりしてしまうからです。

 

 OKRを導入する際の人事評価のあり方については別途解説する予定ですが、ここであらためて強調しておきたいのは、OKRは組織マネジメントの方法であって評価制度ではない、ということです。両者はいったん切り離して考えられる必要があります。

 

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