2021年5月14日にアクセンチュアとアジャイルHRの共催によるオンラインセミナーが開催されました。3時間に及ぶ長時間のセミナーにも関わらず、視聴者のほとんどが最初から最後まで参加された内容の濃いセミナーでした。登壇者ごとに表現は異なりましたが、今後の人材戦略に対する共通的な示唆も数多く得られました。

 

 本レポートではすべての内容をお伝えすることができませんが、筆者(アジャイルHR松丘 啓司)が気になった内容の抜粋をお届けします。

 

第1部 「変質する時代におけるワークライフインテグレーション~人事の新たな役割が企業を救う」

HRエグゼクティブコンソーシアム代表 楠田 祐

 

 在宅勤務の歴史の長い米国では、ワークライフバランスではなく、生活の中で仕事をするという「ワークライフインテグレーション」の考え方が優勢になってきている。マネジャーがメンバーの家族を第一に考えることでワークエンゲージメントが高まるという結果が出ている。

 

 テクノロジーは管理・監視の目的で利用することもできるが、パーソナライズ化された従業員へのサポートにも活用しうる。ワークエンゲージメントもパーソナライズ化される。人事はどちらの目的でテクノロジーを活用すべきか、よく考えることが必要である。

 

 ワークエンゲージメントの高い企業はパーパスを大切にし、それを組織に浸透させるカルチャーがある。テクノロジーを活用することでより浸透が早くなり、データによって結果を分析することができる。そのサイクルを構築することが重要である。

 

第2部 「ピープルセントリックな人事を 実現するデジタル人事改革」

アクセンチュア株式会社

人材・組織プラクティス日本統括 マネジング・ディレクター 植野 蘭子

マネジング・ディレクター 堆 俊介

 

 事業構造変化に応じた人材ポートフォリオの転換・リソースシフト、多様化する従業員ニーズを捉えたエンゲージメント向上・パーソナライズされた従業員体験の提供といった人材・組織マネジメントの改革を行っていく上で、これからの人事には「ピープルセントリック」であることが不可欠となる。

 

 ピープルセントリックとは「人をどのようにマネジメントするか」ではなく、「どうすればその人に活躍してもらえるか」といったように、採用・配置・評価・教育など、人事のあらゆる場面において、人材を中心に主語・文脈を切り替えていくことを意味する。

 

 ピープルセントリックを実現するためには、人材デジタルプラットフォームが不可欠となる。それによって、仕事で交わり化学反応を起こすことを促進する日本型のジョブ型雇用やエンゲージメント/従業員体験に焦点を当てたタレントマネジメントが可能になる。

 

第3部 「自律的な働き方を促進する組織マネジメント変革の事例~OKR+バリュー+1on1+360度アセスメント」

株式会社アジャイルHR 代表取締役社長 松丘 啓司

 

既存事業の生産性向上のために徹底されてきた行動様式が新規事業の開発を阻むという「サクセストラップ」に陥っている企業が少なくない。上位下達の目標管理制度(MBO)によって、受け身・待ちの姿勢、安全志向、他者や他部署への関心低下が強化されている。

 

その行動様式を変えるべくバリューの再定義を行う企業が増えてきているが、OKRと組み合わせることで、より具体的に組織運営に組み込むことが可能になる。さらに360度評価と1on1をセットにした統合的なマネジメントによって効果が高められる。

 

 実際に組織で運用するためには、1人ひとりの状況を見える化するためのテクノロジーの活用が必須となる。しかし、テクノロジーはあくまでもインフラであり、そのインフラを活用して自分から発信しようとするカルチャーを育むことが必要になる。

 

第4部 パネルディスカッション 「変質する時代における人材マネジメント〜生産性向上とワークエンゲージメント 」

(司会)       HRエグゼクティブコンソーシアム代表 楠田 祐

(パネリスト)    経済産業省 産業人材課 課長補佐 片岸 雅啓 様

丸紅株式会社 執行役員 人事部長 鹿島 浩二 様

 

 最初に片岸様より「持続的な企業価値向上に向けた人的資本経営」についての説明が行われた。以下に主なポイントを抜粋

  • 経営戦略を実現するための人材戦略の構築が重要な経営課題だが、経営戦略と人材戦略が紐づいていないのが現状である。
  • 人的資源はこれまでは管理するものと思われていたが、これからはポテンシャルをどう引き出すかがキーとなる。
  • 働いている中で従業員が自律的にキャリア形成を行い、年齢にとらわれない働き方を実現することが必要
  • 人材戦略は経営陣が策定すべきだが、人事が経営戦略の議論に割って入るような形で両者を紐づけていくことが好ましい。

 

 その後、丸紅における人事改革の事例を中心に、フリートークが行われた。全体のごく一部だが、その中でのいくつかのトピックを紹介

  • 得意な分野の中で売るのではなく、社会・顧客が求めているものを提供するために、プロダクトラインを越えた「掛け合わせ」(コ・ワーク)が重要。プロどうしの掛け合わせによってイノベーションが生まれる。掛け合わせを促進するために「15%ルール」などの制度も導入した。
  • カンパニーバリューではなくマーケットバリューが高い人材が重要。その人たちが働きたいと思える会社にするために、生き生きと働ける環境や共感してもらえるパーパスを創造する。結果として会社を辞めても、社外で活躍することが自社のバリューを上げてくれると考えている。
  • エンゲージメントサーベイの価値は、何がトリガーとなってエンゲージメントを上下させるのかが可視化されるところにあると考えている。数字の絶対値よりも、組織が変わることによって定点観測した数値が上がって行くことを重視している。

 

以上