前回のコラムでは、OKRは全社員にとって不慣れな手法であるため、辛抱強く継続しながら組織学習を続けることが必要であると述べました。しかし、OKR導入を成功させるためには、ただ組織学習に任せるだけではなく最初の段階でOKR導入がスムーズに進むように用意周到な準備を行っておくことが重要です。

 

ポイント④:用意周到な推進プログラム

 

 OKR導入に先立って、OKRの導入から全社への浸透に至るまでのシナリオをイメージした上で、社員に対して必要なサポートを準備しておくことが求められます。シナリオを作成する際には下記の「OKR変革ボード」が参考になります。OKR変革ボードでは横軸にOKRのビジョンが組織カルチャーとして浸透するまでのステップを、縦軸に組織の階層を置いています。最終的にはすべての階層に新しい行動様式がカルチャーとして浸透することを目指します。

 

 以下ではOKR変革ボードに従って、必要となる推進施策について解説します。

 

【ビジョン】

  • トップメッセージ

「なぜOKR導入が必要か?」

「OKR導入のゴールとしてどのような状態を目指すのか?」

「それによって得られるメリットは何か?」

 

 OKR導入の目的や必要性について、全階層の社員が理解していなければOKR導入はスムーズに進みません。そのため、OKRによって目指すビジョンを明確に定義し、トップからのメッセージとして、わかりやすく全社に伝えることが最初のステップとして不可欠です。

 

【プロセス&システム】

  • OKR設定・運用プロセス

 OKRに基づく組織運営を混乱なく浸透させるには、一定の枠組みやガイドラインが必要とされます。全社的にはOKRを何階層で設定するか、全社/部門/チームにおいてどれくらいのサイクル(年次・四半期・月次・週次など)でPDCAを回すのか、といった枠組みがなければ、会社全体での組織運営の整合が取れません。

 

 また、期の途中でOKRを見直したい場合はどうするか、他部署のOKRに関連付けすることは可能か、複数名でOKRを共有してもよいか、といったような実務的なガイドラインも必要とされます。

 

  • 支援システム

 OKRはオープンに公開することが原則であるため、システムを利用して各人のOKRと状況を可視化することが必要です。

 

 システム導入に当たって重要なポイントは、できる限り現場に負担をかけないことです。リモート環境でも簡単にOKRの登録や更新ができ、チーム全体のOKRの状況をすぐに確認できるようにするためにはクラウドサービスが適しています。

 

【スキル】

  • OKR研修

 全社員がOKRに関する共通の理解を有し、各人が自分のOKRについて考えられるようになるためには研修の機会が不可欠です。規模の大きな組織ではビデオ教材も効果的でしょう。

 

  • OKRワークショップ

 OKRの設定に当たっては、1人ひとりが単独で考えるのではなく、チームでディスカッションしながらアイデアを練ることが効果的です。そのために、OKRワークショップの標準的な運営方法を設計しておくことが必要です。

 

【カルチャー】

  • OKRミーティング

 週次・月次・四半期等でのミーティングについては上記のOKR設定・運用プロセスで定義しますが、実際の運営に当たってはミーティングのファシリテーション力が求められます。後述のOKR推進メンバーのアイデアも借りながら、チーム内でファシリテーターを育てていくことが必要です。

 

  • 1on1

 チームミーティングだけでなく、1on1の場においてもマネジャーがメンバーのOKRに関する相談に乗ることが必要です。OKRと1on1をセットにして、従来の面談とは異なる新しい組織マネジメントのあり方を定義しておく必要があります。

 

【全般】

  • OKR推進メンバー

 各部門内にチェンジエージェントとしてOKR推進メンバーをアサインすることが効果的です。推進メンバーは部門内にOKRを浸透させることをミッションとして、OKRの設定や運用に関する支援を行います。

 

 また推進メンバーどうしで定期的に情報交換を行うことによって、好事例を共有したり、部門を越えたシナジー機会を検討したりことも可能です。

 

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株式会社アジャイルHR

代表取締役社長

松丘 啓司