前回のコラムでは、全社を方向付けるトップレベルのOKRの重要性について解説しました。今回は3つ目のポイントとして、継続と組織学習の重要性について述べたいと思います。

 

ポイント③:辛抱強さと組織学習

 

 OKRを導入してすぐにスムーズな組織運営ができるようになることは皆無と言っても過言ではありません。その理由は主に以下の2つの課題に起因しています。

 

  • OKR設定の課題

 OKRは1人ひとりが「これを成し遂げたい」という主体的な目標であり、容易には達成できない「野心的(アンビシャス)」な目標ですが、そもそも何を目標に設定し、どの程度のストレッチを目指すのが適切であるかを判断するための基準が最初は不明確です。

 

  • OKR運用の課題

 OKRを設定しただけで成果が出る訳ではなく、OKRの達成に向けた組織運営のやり方次第で成果は左右されますが、OKRに基づく組織運営自体に最初は全員が不慣れな状態にあります。

 

 つまり、OKRの設定にしても運用にしても、経験して学習することが不可欠なのです。そのためには定着するまで継続する辛抱強さが必要ですが、単に辛抱強いだけではなく、OKR設定~運用のプロセスから学ぼうとする姿勢が重要です。

 

 たとえば新規事業の場合、当初は成功のための方程式が確立していないため、OKR自体を仮説に基づいて設定せざるを得ません。仮に顧客獲得のためにメディアへの露出を増やすことをOKRに設定し、そのOKRが達成されたとしても肝心の顧客数が増えないといった事態が起こりえます。そこで、「メディア露出増加⇒顧客増加」という仮説を修正して、新たなOKRを探す繰り返しが必要になります。

 

 また、仮説自体はそれほど間違っていなかったものの、顧客の需要がまだ顕在化しておらず、設定した目標値に遥かに及ばないといった事態も起こりがちです。あまりに高すぎる目標を設定し続けると、毎回、OKRが大きく未達となって達成感が得られなくなってしまいます。ストレッチ度合いの適正レベルは繰り返しの学習によって明確になるものです。

 

 OKRの運用においては、OKRが組織マネジメントの中核に据えられなければなりません。チームレベルでは、週次でOKRの進捗と1週間のアクションを確認するサイクルを定着させることが必須です。その上で、月次や四半期のレビューでは、振り返りと原因分析のステップを組み込むことが重要です。それによって、単にOKRをこなすのではなく、「なぜそうなったか」を考える習慣を全員が体得することが求められます。

 

 OKRの設定と運用が少しはもっともらしくなるまで、どのような企業であっても最低で2年くらいは必要です。1年目は手探り状態で学習を続け、2年目でだんだんと自社としてのやり方が確立し、3年目から本格的に成果を発揮し始めるくらいの時間軸を想定しておいた方がよいでしょう。その過程で、トップからメンバーまでが学習を続けることによって、会社と事業をより良くするための方程式を編み出していくところにOKRの真価があるのです。

 

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株式会社アジャイルHR

代表取締役社長

松丘 啓司

 

(参考情報:OKRツールの選び方についてはこちら