更新日:2021-04-09

「両利きの経営」が注目されています。長期的に持続する企業は、既存事業を「深化」させる組織能力と新規事業を「探索」する組織能力を両立させることができるというのが、「両利き」の意味合いです。

 

 なぜ両立が難しいのかというと、既存事業の成果を高めるために徹底されてきた行動規範が、探索に向けた変化を阻害してしまうからです。既存事業が成熟してくると、企業は効率性や標準化を重視するようになり、現場の自律性よりも管理を強めます。従業員には与えられた目標を忠実にこなすことが求められますが、その行動様式は新規事業の探索に必要とされる行動様式とは真逆のものです。

 

 つまり、既存事業をうまく行うために徹底されてきたことが新規事業の成功を阻むという皮肉な状態に陥ってしまうのです。そのことを「サクセストラップ」(成功の罠)と呼びますが、日本企業の多くがこのサクセストラップにはまってしまっているといっても過言ではないでしょう。

 

 既存事業の成果を高めるための組織マネジメントの中核にあるのが、目標管理制度(MBO)です。MBOにおいては目標を組織の上から末端まで下し、その達成度によって個人を評価するという運用が一般的に行われていますが、それを徹底するほど以下のような行動様式が強化されてしまいます。

 

・目標を与えられるのを待つ受け身の姿勢

・達成できそうにないチャレンジはしない安全志向

・自分の成果を優先する個人主義と自部門の利益を守る部分最適

 

 昨今、導入する企業が増えているOKR(Objectives and Key Results)はグーグル等で採用されている特殊なマネジメント手法のように思われがちですが、実はそれほど特別なものではなく、MBOの問題点を解決する代替案としてどの企業においても検討の価値がある考え方です。OKRによって、以下のような行動様式が促進されます。

 

・主体的に目標を立てる自律的な姿勢

・未知の領域に挑むチャレンジ精神

・組織を越えたオープンなコラボレーション

 

 これらの行動様式は新規事業の探索には不可欠であると同時に、既存事業をさらに深化させるうえでも重要と言えるでしょう。

 

 MBOとOKRについての詳細は、以下もご参照ください。

 

「目標管理制度(MBO)の限界-OKRに学ぶ発想の転換-」(「経営センサー」2019.5)

https://cs2.toray.co.jp/news/tbr/newsrrs01.nsf/0/02B4C85EA5BA064A492583FD001CC19A/$FILE/K1905_042_047.pdf


株式会社アジャイルHR 代表取締役社長
松丘 啓司