「過去」と「一律」にはオサラバ。一部のタレントだけではなく、すべての従業員を対象に、一人ひとりの育成を考えてこそ、会社の未来がある。毎週月曜日12時20分~12時50分まで、楠田祐×松丘啓司で人事の最新トレンドをライブでお届けする「HRMonday」。第22回は、「タレントレビュー」について解説しました。

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【タレントからピープルへ変化する育成】 

「タレント」という言葉が、人事の領域で使われるようになって20年以上が過ぎ、「タレントレビュー」という施策を人事制度として導入している企業も増えています。しかし、その実態は企業によってまちまちで、必ずしも高い効果を出しているとはいい難いのが現状です。そもそもタレントレビューとはどのような施策を指すのでしょうか?

サクセッションプランニング(特定のポジションに対する後継者育成計画のこと)が、次はこの人が適任である、またはそのポジションを担える人をどう育成するかという「ポジション」を起点として考えているのに対し、タレントレビューは「人」を起点として、その人をどのように育成するかという考え方です。元々は、優秀な人材や経営幹部候補になり得る人材を選び、その人たちに将来会社で活躍してもらうために、どのように育てていくかという、限られた人材に対しての育成計画を立てることを目的としていました。しかし、最近海外では、タレントレビューではなく、ピープルレビュー(People Review)やピープルディスカッション(People Discussion)という言葉が使われるようになってきました。その理由は、一部の選ばれた「タレント」だけの育成を考えるのではなく、全従業員、つまり「People」を対象に一人ひとりをどう育てていくかを話し合うことが必要であるという考えに変化してきたからです。

その理由は、10年前くらいまでは、市場もビジネスモデルもさほど変化がなかったため、MBA的なビジネス知識があり、管理ができる人材を選んで、育て、組織の要所々々に配置して管理させておけば、ビジネスは問題なく回ってきました。ですが、今はそれでは太刀打ちできないほど、環境変化のスピードが速いため、個々人の強みや専門性を活かし、自律的に働いてもらえるように、より個人にフォーカスした育成を考えていく必要が出てきたからです。

日本では、昇進会議=タレントレビューとしている会社が未だ多くみられますが、それは従来、企業で働く従業員にとっては、管理職昇進がキャリア前半のゴールとして考えられていたため、誰を管理職に上げるかの判断がきわめて大きなイベントであったという背景があったからだと考えられます。ですが、全従業員が対象となる「ピープルレビュー」となると、当然全員が管理職を目指したいわけではなく、一人ひとりのキャリア志望は異なることから、会社は管理職になること以外でもその人が活躍できるよう、多様なキャリアが実現できる仕組みを作っていく必要がでてきます。

 

【過去よりも未来志向で話す】

 日本でもここ1~2年で、より「個」を見ていこうと、新たな取組を始める企業が増えてきました。タレントレビュー、ピープルレビューという言葉ではなく、人材開発会議と称されることが多いのですが、評価会議のようにその人が過去やってきたことを議論・評価するのではなく、これからその人をどう育てていくかということにより重点を置き議論をする会議のことです。人材開発会議は、過去に時間を使うよりも、未来を議論することがより効果的という、未来志向のポジティブな考えがベースになっている取組みとして、近年注目されています。中には、ジョブポスティング等、他の制度とセットで導入され、より育成を目的とした人の異動が行いやすい仕組みを導入する企業もあります。

企業の課題の1つに、短期的な業績で評価されるために優秀な人材を自部署で囲いこんでしまい、様々な部署で経験をさせることができないといった声をよく聞くことがあります。優秀な人を囲い込んでいるのであれば、組織業績が上がるのは当たり前で、それは評価されることではありません。そういったカルチャーを作ると同時に、囲い込みを崩すためにも、従業員一人ひとりをオープンな議論の場にあげ、全員でその育成、その未来を考えるという仕組みを作ることも重要なのではないでしょうか。

 

【自社にとって効果的な人材開発会議とは?】

 人材開発会議を導入し、一人ひとりの将来を議論することは、高い効果を生み出すと同時に、多くの時間と労力もかかるのが現実です。マネジャーの負荷を減らすためにも、日常的に1on1などの対話の機会を設け、フィードバックを行い、評価面での納得感を高め、期末の評価シートを大量に書くといった形式的な仕事を減らしていくことをセットで検討していくことも必要になります。また、その人の成長を考える時には、会社の方針だけで決めるのではなく、本人の意志も尊重されることが大切です。会社の期待と本人の意志を重ね合わせ、その人にとって最も良いと思われる育成プランを検討するためには、上長は自身の部下に関してプレゼンをし、議論ができるように準備しなければいけません。上長は自分の部下がどのような強み・課題を持ち、どのような思いで仕事に臨んでいるのか、どのようなキャリア志向を持っているのか等、部下のことをしっかりと理解できていることが必要です。年に3回、面談の際にだけ形式的に話すといった関係性では、とうてい人材開発会議で議論ができるまで部下を理解することは難しくなります。

弊社は、企業のピープルレビュー、人材開発会議の導入支援をしていますが、他の施策と同じく、単に会議だけを導入しても高い効果を発揮することは、まずありません。また、現場の負荷検証を十分に行わず導入したことで、マネジャーの業務負荷が増え、結果として仕組みが形骸化してしまっているという状態になった企業もあります。

「過去」ではなく「未来」を考え、「一律」ではなく「個」を見る人材開発が重要であるのは、日本の全ての企業に共通するといって間違いありません。ですが、その考えは共通であっても、どのような「未来」について、どのような「個」に育てていくのかは、自社のビジョンや戦略と結びついて考えられるべきことです。会議でどのようなことを話すのか、議論をする人は誰がよいのか、開催頻度はどのくらいがよいか、会議の規模はどのようなものが相応しいのかといった、細かい設定についても正解はなく、自社において最も効果的な枠組みを検討する必要があります。人事施策も、人材開発と同じく、一社一社の「未来」と「個」を考えた上で、検討が必要になってきていると言えるのではないでしょうか。

 


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