2020年11月11日~13日にインテックス大阪にて開催された「2020関西HR EXPO」の基調講演で、弊社代表の松丘が、【進む働き方改革と変わるべき人事評価制度とは~ニューノーマル時代における評価制度のトレンド~】というテーマで、登壇しました。当日の松丘の講演内容を簡単にまとめたレポートを、お届けいたします。

 

【「変える」必要性を感じ始めた日本企業】

ビジネス環境の変化に加え、働き方改革が進むにつれ、企業が目指す姿と従来の人事制度との間に不整合が起こり、人事制度をドラスティックに見直す企業が少しずつ見られるようになってきました。コロナの影響で、すべての企業が従業員の働き方やマネジメントについて全面的な見直しを迫られることになり、来年度は何かしら具体的な取組を開始したいというニーズが高まっています。今回はそういった企業の「働き方改革に伴い、人事評価制度も変えなくてはと思うが具体的にどうしたらよいのかわからない」「人事評価制度をどう変えていくべきか、専門家の方の話を聞きたい」というリクエストに応える形で、講演をさせていただきました。

講演ではまず始めに、日本における人事評価制度の変遷について解説を行いました。1990年代のバブル崩壊後、急速に低成長・人口減少時代に突入した日本は、それ以前の日本型経営の構造改革をする必要性に迫られました。終身雇用・年功序列を前提とした報酬体系から成果主義に移行し、現場に権限委譲されたミドルアップダウン型の意思決定から、トップダウンで物事を進める中央集権的なマネジメントへ変わっていったのです。それに伴い、人事制度もトップから目標を落とし、目標を達成できた人が評価される設計となり、マネジャーたちは与えられた業務を遂行できているか管理監督することが役割とされてきました。

ですが、ビジネス環境がよりスピーディに変化し、グローバル化も進んできた過去20年間、日本経済の生産性は横ばい状態で、相対的な国際順位に関しては大幅に低下しており、全体として成果をあげてきたとは言い難い状態にあります。組織、企業、日本全体が疲労している状態にあるといってもいいでしょう。それに対し、USではデジタル化が進むにつれ、パフォーマンスマネジメントといわれる、いわゆる組織と個人のパフォーマンスを向上させるためのマネジメントを見直す動きが、この6~7年の間に急速に出てきました。成果主義で有名だった大企業も、軒並み人事制度をドラスティックに変革しています。

日本でも、ここ数年で働き方改革が進み、女性活躍や残業削減といった取り組みは多くの企業が行っていますが、経営的な視点でのパフォーマンスマネジメントの変革を進めている企業は、残念ながらまだほとんどない状態でした。ですがコロナの影響で、多くの企業がニューノーマルにおける働き方を問われることとなり、マネジメントの在り方を「考える」「検討する」だけではなく、「変える」必要性を認識することとなったのではないでしょうか。

 

【ニューノーマル時代に求められるマネジメントとは?】

では、ニューノーマル時代には、どのようなマネジメントが求められるようになるのでしょうか?松丘は、そのキーワードを「従業員の自律」としています。従来は、「こう市場は動くであろう」ということをトップが予想して練った戦略をベースに、目標をカスケードダウンしていく形がとられていました。マネジャーは、その目標が達成されるよう管理監督することを役割とされており、メンバーも目標を達成した人が評価され、いずれマネジャーになることで報いを得るという制度設計がされていました。今でも多くの会社はそのような目標管理をベースとして業務を遂行しているでしょう。

こういった仕組みは、上から下りてきたことを遂行することに重きを置く「受け身」、目標や与えられた予算を達成することが評価されるのでチャレンジを避ける「安全志向」、自部門・自己の成果を優先する「サイロ・個人主義」といった弊害を生みやすくなります。また、仕事において、自分は「こうありたい」「こうしたい」といった思いが反映されにくいため、報酬や評価といった外発的動機により働く従業員が多くなり、エンゲージメントも低くなりがちです。

一方、ニューノーマルの時代では、とてつもないスピードでビジネス環境が変化することに加え、過去の経験や知識だけでは見当もつかない「想定外」のことが数多く起こってきます。現在、多くのマネジャーが実感しているように、見えない・把握できないことが多くなり、マイクロマネジメントをすることが困難な状況です。常にメンバーの動きを管理できないため、明確な指示を出すことができず、またメンバーも上からの指示を待っていては、肝心な商機を逃すことが多々でてきます。そうならないためには、現場で一人ひとりが市場の動きを分析し、それに合わせて戦略やシナリオを考え、トライ&エラーを繰り返し、周囲を巻き込みながら業務を進めていく力が必要になってくるのです。

松丘は、そのキーワードを自分で考えて自分で動く「自律」、達成することだけを目的としない「チャレンジ精神」、自分以外の人の力を最大限に借りる「コラボレーション」としました。また、自律的に動けるようになることで、自分の思いや価値観と、会社の方向性をリンクしやすくなるので、「自分はこれを実現したい」「こういうことをやってみたい」という前向きな内発的動機をもって仕事に臨むことができ、働きがいをより感じやすくなるという効果があると考えます。

 

【変化するマネジャーの役割】

それでは一人ひとりの従業員が「自律的」に働けるようになるために、マネジメントはどのように変化をしていけばいいのでしょうか?松丘は、マネジャーに求められる役割の変化を以下のように示しました。

上述のように、従来のマネジャーは上から与えられた業務を遂行できているかどうかを、経営者側の立場で管理監督することが役割とされてきました。しかし、市場の先行きが見えない状況で、従業員が自律的に考え、行動し、成果を出すことが「貢献」とされるようになると、マネジャーは従業員が「正しく(正しいと予想されるとおりに)業務を遂行しているかどうか」を管理監督する必要がなくなってくるのです。

マネジャーは、一人ひとりのメンバーが成長し、より自分でチャレンジしようという気持ちを持てるように、管理ではなく支援できる素質が重要になってくるといえるでしょう。そのため、業績を主な判断基準とした年次評価が高い人材や、昇進試験に合格した人材であるということよりも、メンバーを理解し、話を聞き、成長を支援できる人材であることが、マネジャーの素質として重要視されるようになります。コロナ禍で多くのマネジャーが「メンバーのタイムマネジメントができない」「タスクの管理が難しい」と人事へ相談してきたという話を聞きました。それはまさしく、マネジャーたちが自分の役割を、管理監督であると考えている裏返しとも言えるでしょう。

 

【目指すべき姿は定まっているか?】

このような市場の変化から、急ピッチで人事評価制度の見直しを検討する企業が増えてきました。ここ数年、特に評価制度が疲労を起こし、様々な側面で不整合を起こしていることは、多くの経営者・人事が感じていました。ニューノーマル時代となることを機に、一気に改革を進めようという流れが見えます。しかし、松丘は、評価制度だけをチューニングしても、その成果は薄く、もっと広い視野で人事制度を変革しなければ、本当のマネジメントの変革は難しいと指摘しました。

一人ひとりが自律的に働き、高いパフォーマンスが出せる組織になるためには、目標管理・評価制度に基づいた、いわゆる会社が定めた公式のマネジメントだけでなく、職場における日常的なマネジメントまでの変革が必要です。また、この制度、この仕組みを導入すれば大丈夫という正解はありません。会社としてどのような姿を目指し、従業員にどのように働いてもらいたいのかを経営的な視点から考え、そのためにはどのような仕組みが必要なのか、一社一社が、自社ならではの仕組みを検討することが必要です。

弊社は経営者・人事の方たちとディスカッションを重ね、経営の目指す姿を制度へとブレイクダウンする支援をここ1~2年で数多く行ってきました。現在も、老舗といわれる複数の大企業がドラスティックな人事制度の改革をしようとしています。その支援を通じて、共通して見えてきたことがいくつかありました。

1つは「未来志向」であることです。従来はその人がやってきたこと、成果を評価することがマネジャーの役割でした。これからは、レーティングや、評価会議よりも「人材開発会議」という形で、こういう人材になってほしいからこういう経験をさせようといった、その人をどう育成するかという「未来」に議論を割くことを重視する方向にいくでしょう。2つ目は、「支援」です。上長だけに限らない様々な人が、本人が常に高い目標に向けてチャレンジし成功ができるように、日常的に支援できる仕組みが重要視されるでしょう。ここ数年、1on1を導入する企業が増えていますが、単なるコミュニケーションの活性化だけを目的とするのではなく、従業員の成長支援の仕組みへと転換していく企業が今後増えていくと考えられます。そして3つ目は、「主体性」です。組織の目標を達成するために、主体性をもって自分で目標を設定し、考え、動くことができる様に、OKRのような貢献とチャレンジが奨励される仕組みがより浸透していくでしょう。

様々な企業とディスカッションを重ねる中で、1on1を導入したい、人材開発会議を導入したいというご相談をよく受けます。ですが、具体的な施策の検討は進んでいても、全社で目指す具体的な「こうありたい」という姿が定まっていないことが多々見られます。一番大切なのは、「どうなりたいか」というすべての判断の軸となる姿が、しっかりと経営的な視点から導き出され、それがきちんと制度や施策に結び付いているかという点です。考える・検討するではなくて、すでに変わる必要が来ている人事制度。まずは自社の目指すべき姿は何なのか?そこからスタートしてみてはいかがでしょうか?

 


アジャイルHRでは、企業の制度改革の支援を行っています。代表の松丘を交えた、ディスカッションや相談会を無料で実施していますので、お気軽にお問合せください。

★お問い合わせはこちらより★