アジャイルHR主催ウェビナー 実施レポート

2020424

 

2020424日に開催したウェビナー「テレワークにおける人材マネジメント」の実施レポートをお届けします。

 

テレワークが急速に進展しています。在宅勤務などによるテレワークには効率的な面がある一方で、離ればなれの従業員が孤立感を強めたり、負荷を抱え込んでしまったりするケースも少なくありません。そのためテレワークの環境では、時間管理以上に従業員のコンディションの確認とタイムリーなケアが必要とされます。

これまでのリアルな職場環境においても、上司によるメンバーのマネジメントには多くの課題がありました。テレワークの環境ではメンバーが目の届かない場所にいるため、なおさらマネジメントが難しくなります。適切なマネジメントがなされなければ、テレワークは従業員の働きがいを低下させる恐れがあります。

本ウェビナーでは、海外のテレワーク事情にも知見が深いHRエグゼクティブコンソーシアム代表の楠田祐氏のファシリテーションの下、テレワークに早くから取り組んできたアクセンチュアの元執行役員・人事部長の武井章敏氏より、テレワークにおけるマネジメント上の課題克服に向けた取り組みについて語っていただきました。次に、楠田氏より海外の国がコロナウイルスによるロックダウンの下どのような働き方、人材マネジメントをしているか、最新の情報をお話いただきました。また、アジャイルHR代表の松丘啓司よりテレワーク環境における人材マネジメントを支援するクラウドサービス(iromoji:イロモジ)の紹介を行いました。

 

◎武井氏のお話

武井氏には緊急事態宣言に入ってからのテレワークと、平時のテレワークにおける環境と人材マネジメントについて、話をしていただきました。

 

アクセンチュアのような外資系企業や海外とのやり取りがある方は、かれこれ15年、あるいはそれ以上前から深夜、早朝の電話会議があったので、それに対応するための在宅勤務は平時のことで、また日系企業でも持ち帰り残業や週末に仕事することもあった。いずれも、どちらかというと社員の選択で在宅勤務をしていて、「自分の責任でそういう環境を整えなさい」「在宅勤務でもオフィスにいるのと同じパフォーマンスを期待します」という考え方だったが、現在は会社が在宅勤務をしてくれというわけなので、相当サポートしていかなければいけないというフェーズに大きく変わってきています。

それを踏まえて、以下のようなことが重要になってきています。

①在宅勤務の長期化/コロナ収束後も在宅勤務が標準化することを見込んで必要なツールやファシリティを整える。

PCやシステムの導入、習熟はもちろんのこと、作業デスクや長い間、座っても腰を痛めない椅子など、必要なものを整えること。家族とよく話し合って家庭内での会議中等におけるルールなどもきちんと決め、互いにストレスを与えない、感じないようにすることが必要。ずっと家にいるだけでストレスなので、ストレスの要因を自ら探して自ら解決するように取り組む。

②上司が部下に関わる。見てあげる。

仕事のやり方だけでなく、どういう気持ちで取り組めているか、チームや人間関係で問題がないかなど、あらゆる点で上司が本人にしっかりと接していかないといけない。在宅勤務の今、そこがより大きく求められている。

③個々人とチームの役割・ゴールをしっかり定めて互いに共有し合う。

互いの距離感が遠くなった今、まさに成果の問われる状況になった。これは単にギリギリとマネジメントするためではなく、上司と本人が互いに納得した上で仕事のゴールを定め、さらにそれをチームみんなで理解し合って、達成に向けて支え合う体制が必要という意味。バーチャルで互いの存在が見えにくくなる在宅勤務ではこのことがより一層大切となる。

④今は特に、互いに気遣うことを心がける。

在宅勤務、特に毎日の完全在宅勤務は非常事態であり、オンライン会議中にお子さんや犬が出てきたり、宅配便が届いたりすることは当たり前のことと認識し合うことが必要。本人はそれをいちいち申し訳ないと感じているとストレスになるし、上司や相手側もいちいち気にしていたらそれもストレスになる。今は非常事態なので、互いに気遣い、会議中でも何かあれば少し席を外して対応することをむしろ推奨すべきだと考える。

⑤テクノロジーの進歩をいち早く察知して取り込んでいく。

これまで新入社員でいえば上場企業だったら数え切れないほどたくさんの応募があり、何日もかけて採用担当が見ていたのをAI化してきている企業も多い。アクセンチュアでもコロナを機に面接をオンラインに変えてみたところ、Face to Faceでするべきだという心理的な障壁が大きかっただけだということがわかった。今後、テクノロジーは格段に進むと思われるので、いち早く察知して取り込んでいくことが今やるべきことの1つだと思う。

 

また、人事部門の幹部、管理者の方々へのメッセージという意味で以下のようなお考えもお話し頂きました。

①人事部門内の人的リソースの再配分が必要となる。

在宅勤務によって採用、教育、労務などの業務に偏りが出るため、特定の部署に業務負荷が偏らないために必要なリソースの再配分が必要となる。実施しなければ特定部署の負荷が高まり、また、暇な部署ができるなどして、持続的な社員支援に支障をきたすことになるだろう。

②在宅勤務支援に必要なファシリティやツールの導入、ストレス軽減のための施策を行うための予算の再配分が必要となる。

業務工数を意図的に徹底管理して残業を削減、オフィスのキャパシティの見直し、水道光熱費の見直し等々、間接予算の組み換えを行い必要な資金を捻出することが必要だろう。椅子ひとつ買うにもお金が必要だが、長期的な視点での社員への金銭的サポートも必要だろう。

 

最後に、これらのことを人事部門内で実践してみて、ノウハウを貯めて在宅勤務の秘訣やルールとして社内に展開して頂きたい。現場の上司任せではそれぞれの考え方が異なるので、標準的なルールを浸透させることが、互いに気持ちよく在宅勤務できる基本になるだろう。そして、中間管理職のマネジャーに対しては、彼らの1人ひとりの声をしっかり聞いて人事部が必要なサポートを行うことが大切だ。それによってマネジャーも余裕をもってメンバーをマネジメントできるようになる、というメッセージを発信されました。

 

◎楠田氏のお話

楠田氏からはまず海外の事例をいくつかご紹介いただきました。

 

・IBMやOracle、HP、Apple等外資系企業では99年頃から在宅勤務を取り入れている企業が多い。Windows98環境が整ったこと、女性の活躍推進に対する動きが活発になったことによる。

・サンフランシスコでは89年にサンフランシスコ地震で必要に迫られて在宅勤務が始まった。Windowsもなく相当大変だったと想像するが、その中で繰り返し工夫してきたので、今では当たり前にできているのだろう。

・オラクルにはテレワークのマニュアルがあり、印象的だったのが「家で仕事をするときに大切なのは仕事をする椅子とプライベートの椅子は変えなさい」ということ。家の中の人材マネジメントも重要だと言える。仕事を90分したら席を変えて15分コーヒーを飲むといったことが重要。

・ベイエリアの会社ではどこも、ロックダウン下における最重要な人材マネジメントは、部下の仕事ではなく「生活」にマネジャーが寄り添うこととしている。そうすることによりエンゲージメントが高くなり、仕事をしている時間も集中してがんばることに繋がる。

・社員の健康が今日は良好なのか、普通なのか、良くないのか。ドイツやアメリカではツールを使って確認している。

・ロックダウン後に社内で精神科医の先生に講演してもらった際のエピソードとして、「1回オンラインのミーティングに不参加だったからといって問い詰めない。2回目に参加したらその後に何があったか話を聞く。1回くらいなら許容するカルチャーが重要」

・アメリカでは同じチーム内でZoomをつけっぱなしのことも多く、職場と同じような環境を作っている。

・ピンチをチャンスと捉えるベイエリアの会社では採用の内定までもオンライン、営業の受注までも全てオンラインになっている。ものすごく生産性が高い。家to家。反面、日本は電車。そういう世界も壊さないと世界に勝てない。

 

また、日本の企業に対しても緊急事態宣言後に取材をされ、日本では海外と異なり以下のような特徴があると話されました。

 

・在宅勤務をしたことがない企業では、まず人事がサポートするという仕組みで実施しないと難しい、健康か否かをマネジメントし、HRテクノロジーを活用して繋がることが大切。

・アベノミクスの働き方改革で多くの企業が持ち帰り残業を禁止にしていたので、家に仕事をする椅子や机やプリンタがない。そのためまずインフラを揃えるところから始まる。2番目に夫婦共稼ぎが当たり前で、同じ時間にミーティングが入ると、どの部屋でやるのと小さな夫婦喧嘩等が始まる。こういう環境の中で仕事にしっかりと集中するのが難しい。

・突然の在宅勤務でどうしていいかわからないという自宅待機の人も多い。日本企業ではどうしても人に仕事がついてくるので、余計な仕事をする人がいることが在宅勤務によって浮き彫りになっている。在宅勤務をすることであらためて真の成果主義が試されさている。

・ある企業では在宅勤務を支援するために社員や契約社員に一時金を支給している。今こそ人事が、他社がやっていることを真似るのではなく、働き方について各企業の中で真剣に議論し、知恵を出し合ってイノベーションを起こすべきだ。

・コロナウイルス騒動が収束後は、会社に対する忠誠心より働きがいを求める時代になるだろう。会社が生活に寄り添えば、会社が生活に寄り添ってくれたからがんばろうというエンゲージメントの時代になる。

 

◎松丘より

松丘からも以下のような話をさせていただきました。

 

・在宅勤務では上司から細かく指示、レビューをできなくなるので、おのずと自律的に考えて行動することが必要になる。そのために1番大事なのは自分のモチベーションをある程度維持することだが、在宅勤務によりいろんな要因でモチベーションを下げてしまうことが起こり得る。特に孤立感についてはよく言われている。そこをケアできるツールということでアジャイルHRのクラウドサービスiromojiのご紹介もさせていただきました。

・これまでのテレワークは仕事の一部を家でする、一部の人が家でする、だったが、これからは基本的にすべての人がすべての仕事をリモートですることになる。オフラインからオンラインのやり方へ変わることにより、日本企業の生産性は飛躍的に向上する可能性があると考えている。オンライン上でのマネジメントの方法についてノウハウを蓄積して、今後もいろんな会社間で共有していく機会を作っていきたいと思います。

 

◎各社の取り組み

最後に、ウェビナーのチャット内で、ご参加いただいた企業が現在テレワーク上でされている取り組みについてもご紹介いただきましたので、以下にご紹介します。

 

・在宅勤務で体を動かさなくなるので、健康管理室からストレッチの配信や、ヘルシーマイレージへの参画(運動した内容を記録して、チーム単位/個人単位でマイルを稼いで競い合う)といった発信を、ポータルなどで積極的に行っている。

・オンライン会議の合間にストレッチや筋トレをする

・週3回、17:00-18:30にTeamsの会議ルームを開いておき、「井戸端会議」という名の元で部のメンバーが自由に参加できる場を作り、コミュニケーションの場をもつ。心理的安全性を感じてもらうようにしている。

・チーム内で週に一度ランチタイムに「雑談タイム」をTeamsで開いている。参加は任意。気軽な話題で全員が参加できるようにし、メンバーの普段の様子も確認するようにしている。

 

【講師紹介】 

武井 章敏氏/元アクセンチュア執行役員・人事部長

 

楠田 祐氏/HRエグゼクティブコンソーシアム代表

 

松丘 啓司/株式会社アジャイルHR 代表取締役社長