スカイライト コンサルティング株式会社 羽物俊樹氏(右):
慶應義塾大学理工学研究科修了。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)を経て、2000年にスカイライト コンサルティング株式会社を創業。顧客から高い評価を得ているコンサルティングサービスを成長させることにとどまらず、ベンチャー投資や新規事業の立ち上げ・推進をリードしている。近年では、クロスボーダーでのコラボレーションやイノベーションにも取り組んでいる。

松丘:最初に御社がどういう会社か、特徴を教えていただけますか?

羽物氏(以下、敬称略):スカイライト コンサルティングは2000年に設立されましたので、今年で創業20年を迎えます。前職のアクセンチュアの仲間とスピンアウトし、さらに外部の人も採用してコンサルタントとして育てていき、現在140人くらいの会社となっています。

事業の最も大きな柱は、企業向けのコンサルティングです。特徴としては、教師のように指導するというコンサルティングでもなく、アウトソーサーのように言われたことをやるというわけでもなく、「経営課題をお客様と一緒に解決していきましょう。そのために必要な頭脳やワークロードを提供させていただきます」というスタンスだということです。

 もう一つはベンチャー投資・育成事業です。世の中を良くしていくための投資が必要だと考え、スタートアップ期のベンチャーにも出資を含めた支援を行い、そこを伸ばしていくという事業です。近年ではスポーツビジネスに関わる企業にコンサルティングサービスを提供したり、海外展開もしたりしています。

松丘:ありがとうございます。羽物さんのことはかなり以前から存じ上げていますが、自分で全部戦略を立てて、逐一指示して動かしていくようなタイプではないと思います。いろいろな事業をやっておられるのは、社員の皆さんが自律的に動いているからでしょうか?

羽物:おっしゃる通りですね。上から戦略を落とすということはやっていません。2000年に会社を設立した時、27~33歳のコンサルタントが20名程度いましたが、ほとんど同年代の者が集まってさあやろうと言っている時に、自分が一番上だから従ってほしいというのは無理だと思いましたし、当然そのやり方では誰も楽しくない。せっかく新しい会社だとワクワクしていた時でしたので、価値観は共有しながら、やりたいということを大事にしたい、経営としてそれを後押ししていくというスタンスで行こうと決めました。それはずっと変わっていません。

 社内では、当然、私が提案することもあり、他の社員がやりたいと提案してくることもありますが、私はどちらも重みとしては変わらないと思っています。この思いを大切にして、事業として、皆で関わっていくというやり方をしています。

 コンサルティング事業においても、社内でアサインメントの挙手制を採っています。こういうプロジェクトがあるよと開示して、それに対して挙手をしてもらってマッチングしています。こういうやり方だと、パフォーマンスも、本人のモチベーションも向上すると考えているからです。一つの案件に何人も手を挙げたり、複数の案件があるのにほとんど手を挙げなかったりすれば競争が起こりますし、社内市場のようですが、そこには経営陣も介入しません。コンサルティング事業でもそれ以外の事業でも、自主的な思いを後押ししていこうというやり方を取り入れています。

松丘:なるほど。20人くらいの仲間内ですと割とやりやすいと思いますが、それが140人に増えた時に、いろんな仕組みが必要になるでしょうし、何をやりたいか分からないといった人もいるのではないでしょうか?

羽物:たくさんいますよ。コンサルティング会社に興味がある人のなかには、自分がキャリアアップしたいという思いはあるものの、やりたいことが明確にはなくて、とりあえずコンサルティング業界で経験を積みたいという人もたくさんいます。ですから、やっていくうちに見つけていくということになりますね。君にはこういう仕事が向いているかもしれないという機会やアドバイスを提供することが常に必要になってくると思います。

 また、プロジェクトの中でこういう振る舞いをする人がハイパフォーマーであるとか、このクラスにはこういうことが求められるといったような評価項目を作りブレイクダウンしていて、3~6カ月に一度、対話をしながら運用しています。世の中で言う1on1ですね。被評価者が今できていること、問題になっていること、次にチャレンジすべきことなどをきちんと対話し、コメントを残していくようにしています。自分の足りないことは評価の場やメンタリングの場でも言われるので、自分で改善しようとなりますし、それをやり続けた人が評価され昇格し、その中でやりたいことを見つけて提案するというステップが一般的ですね。ですから、明確にやりたいことがない人がいても困ることはありません。

 

松丘:マネジャーがキャリア支援をするのは1on1の1つの目的でもあると思いますが、事業会社でよく耳にするのは、部下のキャリア開発支援をしようにも、マネージャー自身が将来的なイメージをもっていないので、何をどう支援するのか分からないといったことです。そういったことはあまりないのですね。

羽物:そのようなマネジャーが部下に対してやりたいことを見つけてほしいと言っても全然、説得力がないですよね。それは実は経営陣にも跳ね返ってくることだと思うので、私自身が、世の中は次こうなるからこういうことをやりたいと常に考え、発信するようにしています。そうすると、周りの社員も同様にやりますし、自分も影響を受けて何かをやろうという波及効果はありますね。経営陣から、ミドル層を経て、全員に浸透していくと思います。

松丘:何かをやりたいと発信して、それを実際にやることが大切ですよね。

羽物:そうですね。自分で動くことが必要ですよね。私がやりたいから「あなたもやってください」というのではなく、やりたいと言ったことに対して自ら動くということで、本気度も伝わります。率先垂範することが波及効果のためには大切だと思います。

松丘:OKRに関する研究で、やりたいと思って立てる目標というのは、やりなさいって言われて立てる目標よりもたいていレベルが高くなり、そういう目標に対しては、人に言われた時よりも主体的な努力が加わるのでパフォーマンスが高まって、結果的に大きな成果が得られるという結果があります。御社でもそういう目標設定をされていると思いますが、どういうやり方をされていますか?

羽物:弊社には3種類の評価制度があります。一つはバックオフィス向けです。やるべきオペレーションを行う中でもチャレンジ目標を置くOKR的な考え方をしています。3カ月に一度は 1on1をして振り返っています。2つ目がコンサルティング部門のシニアマネジャーまでの制度です。プロジェクトでのパフォーマンスの評価をするコンピテンシー評価と、コントリビューション評価です。こちらも、実現するためにきちんと対話するようにしています。3つ目が執行役員や部長クラスの、ある程度上の人に対する制度です。OKRの考え方を取り入れていて、会社の計画というよりも、自分が次の半期にどういうチャレンジをするのかを宣言してもらい、半年後に振り返ってまた同じことをします。世間でOKRが話題になる前から取り組んでいます。

松丘:各自がチャレンジしたいということはもちろん大事ですが、会社の方向性から外れることはないのでしょうか?

羽物:ほとんどありません。弊社は「いい未来を、共に生みだす」というビジョンを設定しているのですが、コンサルティングも投資も、相手と組んで一緒に成功しましょうという、相手があってのサービスですので、自分たちも高付加価値なサービスを提供することでそれを実現するという価値観は社員の中に浸透しているのだと思います。だからその枠組みから外れたものは出てこないんでしょうね。

松丘:読者の方の中には、コンサルティング会社は一人ひとりがプロフェッショナルだからそういう運営ができるんだと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、それについてはどうですか?

羽物:あるとは思いますが、コンサルティング会社でもこういった運営をしていないところも多いので、必ずしもそうではないかもしれません。例えば弊社における挙手制のアサインメントにマネジメントが介入しないというのは、相当の覚悟がないとできません。もどかしい時も実際多いですが、覚悟をもって実行しています。一般の企業でも、社員に任せる時にどこまでマネジメントが手放しで任せる覚悟をもっているかというのは、同じだと思うんですよね。コンサルティング会社だからできるというのは言い訳に過ぎなくて、どの会社でもできると思いますし、それで社員一人ひとりがチャレンジして達成したという自己実現をしていく状態を作り出すことが大事だと思います。

 コンサルティング会社だから有利なところもあるとは思うんですが、相手があってのサービスですので、クライアントに言われたら従うのが当然といった部分も逆にあります。弊社の場合はクライアントに依頼されたとしても価値観の合わない仕事をやらないといった判断もしたりしますので、そこも覚悟の一つかなと思います。

松丘:逆に言うとそれくらいの覚悟を持たないとできないってことですね。

羽物:それもありますし、長期で見た時には絶対に良いだろうという信念はありますね。自分が関わりたいプロジェクトを選ぶということは、自分でキャリアを考えて、チャレンジできるプロジェクトを選ばないと成長しないということなので、上司から人が足りないところにアサインされるのとは異なります。長期的に人材を育てていくビジネスをしたいと常に思っています。

松丘:ありがとうございます。今日はいいお話を伺うことができました。御社の益々のご発展をお祈りしています。

 


松丘 啓司(まつおか・けいじ) 株式会社アジャイルHR 代表取締役

 1986年東京大学法学部卒業後、アクセンチュア入社。同社のヒューマンパフォーマンスサービスライン統括パートナーを経て、2005年に企業の人材・組織モデル革新を支援するエム・アイ・アソシエイツ株式会社を設立。同社ではパフォーマンスマネジメント、ダイバーシティ&インクルージョンなどの領域を中心にサービスを提供。2018年にパフォーマンスマネジメントに特化した株式会社アジャイルHRを設立し代表取締役に就任。主な著書として、『1on1マネジメント』『人事評価はもういらない』『論理思考は万能ではない』『アイデアが湧きだすコミュニケーション』『ストーリーで学ぶ 営業の極意』『提案営業の進め方』『組織営業力』などがある。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。

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