HRサミット2019/HRテクノロジーサミット2019 参画レポート
2019年9月19日
アジャイルHR セミナー事務局
2019年9月19日に「HRサミット2019/HRテクノロジーサミット2019」にて「トレンドマイクロにおける1on1/OKR/No Ratingsへの取り組み~HRテクノロジーの活用事例~」と題する講演を行いましたので、実施レポートをお届けします。
昨今、1on1という言葉が日本でも広まりつつある一方、導入に際し課題を抱える企業やケースを耳にすることも増えてきました。トレンドマイクロ株式会社では、2000年以前から1on1に取り組んでいます。また、OKRやNo Ratingsを含めたパフォーマンスマネジメントの大きな変革過程にもあります。
本講演では、同社におけるパフォーマンスマネジメント変革の概要と、モバイルアプリやピープルアナリティクスなどのHRテクノロジーがどのように有効活用されているかをご紹介いただきました。また、人事部にとってのメリットだけでなく、従業員の働き方にどのような変化が現れているかについてもご紹介いただきました。
【講演Part1】では、弊社代表取締役社長の松丘啓司が登壇し、HRテクノロジーを活用したパフォーマンスマネジメント変革ついて講演いたしました。
【講演Part2】では、トレンドマイクロ株式会社 人事部ビジネスパートナーの小木曾光倫様が登壇され、トレンドマイクロでの1on1/OKRへの取り組み及びHRテクノロジーの活用事例についてご講演いただきました。
【講演Part1】HRテクノロジーを活用したパフォーマンスマネジメント変革
松丘はまず、株式会社アジャイルHRのミッションについて話しました。これまでの目標管理や評価制度の固定観念にとらわれない、新しいパフォーマンスマネジメントを実現し、日本経済の飛躍的成長に貢献するというものです。
その後、現状の目標管理、評価制度の問題点、それによって日本経済が低迷している現状、その現状を打破し、企業がイノベーションを起こして成長力を取り戻すためには、パフォーマンスマネジメントの変革が不可欠という考えを話しました。
さらに、組織内で新たなパフォーマンスマネジメントを定着させ、パフォーマンスの向上を実現するためにはITツールの活用が必要不可欠と考え、これからご講演いただくトレンドマイクロ株式会社にご協力を頂き、ITツール「1on1navi」を開発した経緯を説明しました。
これまでのITツールの活用は管理や評価が目的で、年数回のみの利用であったことについて触れ、「1on1navi」をはじめこれからのITツールの活用は、パフォーマンス向上のための支援が目的で、途切れることなくコミュニケーションや支援が可能になることについて説明しました。
最後に「1on1navi」の概要についても触れ、「1on1navi」を活用いただいているトレンドマイクロ様に具体的な活用方法を伺うべく、話を繋ぎました。
【講演Part2】1on1 / OKR への取り組み
講演Part2では、トレンドマイクロ株式会社の小木曾様より、会社紹介から始まり、社内での人材マネジメントシステムについて、OKR取り組みの背景、「1on1navi」導入までの道のり、「1on1navi」導入後の効果、社内でのHRテクノロジーの活用事例についてお話しいただきました。
<トレンドマイクロ株式会社 会社紹介>
トレンドマイクロは日本発の多国籍企業で、世界30か所以上にオフィスを構え、グローバルにセキュリティソリューションを提供している会社であり、お客様のデジタルライフやITインフラを脅威から守るということをミッションとされているとの紹介がありました。
「単に報酬のためではなく、いい仕事をしたい」「自らの力によって、キャリアを築く」「そのために生涯に渡って学習し続ける」というキャリア自律 ” Be Yourself “の考えに共感する優秀な人材の集団であり、そのような人材を採用することにこだわっておられるとのことです。
そのため、世界中のベストプラクティスを共有し、日々のビジネスに取り入れてお客様に価値を提供するということが自然に生まれ、世界中のオフィス間での異動や再入社も多く、副業も盛んとのことです。” Be Yourself “に共感できる人には非常に働きやすい会社とのお話でした。
<人材マネジメントシステムについて>
続いて、トレンドマイクロの評価システムについて概要の説明があり、パフォーマンスではなく、コントリビューション、つまり、結果を出すよりチームに貢献することが評価につながっているというお話がありました。
そのためには、未来志向で物事を考えて、何をすれば評価されるのかという目標設定を、いろんな人と対話しながら決めていく必要があり、上司と部下、横のつながりにきちんとした信頼関係があり、何でも話せる関係が重要だと考えている。そのためにやはり1on1が必要だという考えのもとに、創業者のスティーブ・チャンが2000年以前から1on1を導入し、すでに習慣化されているとのお話でした。最近では、各フロアに1on1専用のガラス張りのブースも設け、会議室不足も解消しオープンに実施されているとのことです。
1on1の効果が本当に出ているかということについては、これまで、「結局、業務の進捗確認になってしまう」「キャリア自律なんだから自分で考えて行動してよと言われて終わってしまう」等のネガティブな声もあり、なかなか理想の姿に近づくのは難しいという思いがありながら、以下のような改善活動を続けてきてきました。
・管理職向けのトレーニング、コーチング
・公開1on1をするなどビジネスパートナーからのコーチング
・人事部による社内ブログでの啓蒙
その結果、1on1自体はほぼ習慣化し違和感なく進められていて、月に一度は少なくとも実施されている状態。そして、2010年からトレンドマイクロのリーダーシップスタイル自体が、トップダウンのスタイルから、サーバント型スタイルに変化したため、1on1もそれに同期して変化してきているとのことです。具体的には、上司に進捗を詰められてしまうような1on1から、部下の成長をきちんと意識してサポートしていくような1on1へ変わってきているそうです。そして、さらに1on1を磨いていくために以下のようなことを継続していく。これがトレンドマイクロの現在の人材マネジメントシステムとコミュニケーションスタイルだというお話でした。
・ポジティブインフルエンサーを見つける
・そのインフルエンサーに「1on1をするとどんないい事があるのか」を共有、訴求する
・「いい事」を実感してもらう
・「1on1navi」の記録機能を利用し、メンバーと共有し、経験学習を促進する
<OKR取り組みの背景>
続いて、営業部門での事例を用いてOKRの取り組みについてお話がありました。
コントリビューションマネジメントが大切だとしてはいるが、実際にはなかなか設計した通りには進んでおらず、上司が同じ職種のメンバーに一律な目標を設定する等、一人ひとりの成長支援につなげるのが難しいということがあったため、目標設定の際にOKRの考え方を取り入れたという経緯を説明されました。
きちんと目標を構造化して、その達成率や進捗状況を周囲と共有する。1つのイニシアティブが終われば、また新しいイニシアティブ/ OKRにチャレンジすることによって、自分自身の成長にもつながることが実感できるようになってきているというお話でした。
<1on1navi導入までの道のり>
続いて、「1on1navi」導入までの道のりを、「1on1navi」のレポート機能にあるグラフ(利用者数推移)を用いてお話しされました。
「導入します」と伝えただけではどうしても目標の登録が増えなくて困っていたが、以下の方法で解決されたとのことです。
・関係者全員を集めて、同じ時間に同じ場所で、登録し合う
・入力イメージをもってもらうためのガイド/テンプレートを用意する
・「1on1navi」を使うメリットについても訴求する
その結果、自分の目標(=仕事)が誰かと関係していることが分かることで、より仕事が早くなったり、コラボレーションが非常に促進されたりするようになったとのことです。
<1on1navi導入後の効果>
続いて、「1on1navi」導入後の実際の効果についてお話しいただきました。
「1on1navi」の活用度が、エンゲージメントサーベイとどのような相関関係があるかと期待して始めた結果、エンゲージメントサーベイの「総合的な満足度」「人間関係」「組織風土」「承認(会社の理念などの理解)」スコアがそれぞれ上昇してきていることがわかったとのことです。
<社内でのHRテクノロジーの活用事例>
最後に、「1on1navi」に限らず、トレンドマイクロでは多くのHRテクノロジーを導入されている事例をご紹介いただき、お考えを以下のように纏められました。
正解はないが、HRテクノロジーを導入することで、今まで主観だけで判断していたものが、客観的に見ることができるようになり、主観と客観を掛け合わせて意思決定を行えるようになるので、企業の成長を止めることなく、さらなる次のステージに行くことができる。
1つ導入したからといってすべてが改善するわけではないので、各社の企業文化や社内の状態をみて、シナリオを立てる。テクノロジーが複数掛け合わさることによって、価値が最大化/可視化される。
【アンケートより】HRサミットに参加したお客さまの声
当日ご参加いただいた方々からは、沢山のお声をいただきました。代表的なものをいくつか、以下にご紹介いたします。
・HRテクノロジーの活用、エンゲージメントサーベイとの相関関係が印象に残った
・シナリオをどう描くかということについて、重要性が非常によく実感できた
・パフォーマンスマネジメントの重要性が印象に残った
・トレンドマイクロの人材マネジメントシステムが印象に残った
・先進的な挑戦をされていて、非常に参考になった
・テクノロジーの活用イメージがわいたこと、トレンドマイクロはきちんと「軸」があることに感銘を受けた
・目標管理と処遇を直接紐づけないやり方が参考になった
・OKRや1on1とエンゲージメントとの相関関係が印象に残った
【講演者紹介】
トレンドマイクロ株式会社
人事部
ビジネスパートナー
小木曾光倫 様
株式会社アジャイルHR
代表取締役社長
松丘啓司