更新日:2018-07-31

   

① ストレッチ目標との違い(その1)

OKRは野心的な(アンビシャスな)目標とされています。これまでも目標はストレッチしたものでなければならないと言われてきましたが、何が違うのでしょうか?
OKRはストレッチ(背伸び)すれば届く目標ではなく、「ちょっとやそっと背伸びをしても届きそうにない目標」なのです。なぜ、そのように無謀とも思えるような目標を立てるのでしょうか?
ストレッチ目標の例としては、売上前年比105%といった目標があげられます。市場が伸びない業界では5%増でも簡単ではありませんが、100%分は前年と同じで5%分だけ追加されただけです。つまり、ここから促されるアクションは5%を確実に稼げる行動なのです。

ところが、「ちょっとやそっと背伸びしてもとどきそうにない目標」に向けたアクションは、これまでとはまったく違ったものになるはずです。したがって、OKRは従来の延長線上にはない新たなチャレンジを要求するのです。そこに大きな意味があります。

② ストレッチ目標との違い(その2)

野心的(アンビシャス)な目標は上から与えられるものではありません。OKRは「自分はこれを成し遂げたい」という志(こころざし)に基づくゴールでなければなりません。
「ちょっとやそっと背伸びをしても届きそうにない目標」に向けた行動は、これまでに経験したことのないチャレンジに違いありません。そのため、一歩踏み出すには勇気が必要です。
うまくいく自信が持てないのは当然です。また、実際にやってみるとうまくいかないことの方が多いでしょう。けれども、行動を起こさなければイノベーションは生まれません。これまでと同じような行動からは、これまでと同じような結果しか得られないのです。そもそも、チャレンジというのは、結果が読めないからチャレンジなのです。
しかし、行動を起こすことによって、新たな道が拓けたり、新たな景色が見えたりします。OKRの意義は、そのような新たな変化を起こすことにあります。できない理由を並べ立てるのではなく、自分の意志で高いゴールを設定して、そこに向けて一歩を踏み出すことを促すのがOKRのねらいといえます。

③ 達成度で評価しない

OKRは野心的な目標なので、よほどのことがなければ達成できません。では、野心的な度合いはどの程度が望ましいかというと、しばしば「スィートスポットでヒットして達成度が60~70%」になりそうなレベルと表現されます。
つまり、ほとんどの場合は100%を大きく下回るので、達成度を評価の指標にしてもあまり意味がありません。
また、達成度で評価してしまうと、簡単に達成できそうな野心の乏しい目標を設定したり、数字を稼ぎやすい常識的な行動を促したりしてしまうため、OKR本来のねらいが削がれてしまいます。
とはいえ、賞与を決めたりするためには何らかの評価の尺度が必要です。達成度を用いない場合、何を尺度にすればよいのでしょうか?
それは多くの場合、成果そのものやチャレンジ行動の「貢献度」によって測られます。言い方を変えると、チャレンジの結果がマネジメント層や周囲の期待と比較して、どれだけの「インパクト」をもたらしたかが評価の対象となるのです。

④ 志と戦略を構造化する

OKRは目標を単に「目標」と一言で述べるのではなく、ObjectiveとKey Resultに構造化して定義されます。
Objectiveは「何を成し遂げたいか」という意志を表したゴールです。また、Key Resultは何が達成されれば、そのゴールを実現できるかを示す定量的な指標です。
ゴール(Objective)が野心的であるほど、その実現は容易ではありません。高い目標を掲げたら、自然にそれが実現することはあり得ません。そこで目標が高ければ高いほど、何が成功要因なのかが十分に考え抜かれていることが必要です。それを明確にしたものがKey Resultなのです。
つまりOKRは「志」と「戦略」を1つのセットにして組み立てられます。目標はワクワクと気持ちを鼓舞するものであると同時に、冷静な戦略に立脚したものでなければならないのです。その両方の要件を備えた目標設定のフレームワークがOKRであるといえます。

⑤ 自分から関連付ける

多くの企業におけるウォーターフォール型の目標管理では、個人の目標は組織の上からカスケードダウンされてくるものでした。他方、OKRは上から与えられるものではなく、自分はこれを成し遂げたいという志に基づいた目標です。
しかし、ビジネスにおける個人の目標は、上位組織の目標達成に貢献するものでなければなりません。そのため、OKRでは上位組織のどのOKRに貢献するために、自分は何を目標にしたいかを一人ひとりが主体的に考える流れになります。つまり、上から下に下すのではなく、下から上に突き刺すイメージです。
そのため、OKRの設定は常にトップがOKRを示すところから始まります。トップのOKRは組織全体のミッションやビジョンの実現につながるものでなければなりません。「自分たちは何者なのか」「どうなりたいのか」というミッションやビジョンが曖昧だと、OKRにも魂が入りません。
ところで、下から上に関連付けを行ったとき、誰にも関連付けてもらえない目標(Key Result)が残ってしまう可能性がありますが、上から強制的に押し付けてはいけません。上位者はその目標に貢献してもらうために、なぜその目標が重要なのか、なぜそのメンバーに貢献してもらいたいのかという「期待」について説得力を込めて伝える必要があります。そのように上司と部下ですり合わせを行いながらOKRを確定していきます。
また、OKRにおける関連付けは上下の関係だけではありません。実際の仕事は他のメンバーや他の部署と連携して行われるものであるため、横どうしの関連付けも重要です。つまり、コラボレーションをする可能性のある他のメンバーと目標設定の段階で話し合うことによって、OKRに今後のコラボレーションを織り込むことができるのです。

⑥ 広く公開する

OKRは広く周囲に公開することが原則です。OKRの内容だけでなく、進捗状況も公開します。OKRに限らず、目標は公開されることによって、その成果が高まるという調査結果があります。目標達成に向けての個人のコミットメントが高められるからです。しかし、OKRを公開することにはそれ以上の意味があります。
OKRは野心的な目標であるため、意欲的なチャレンジが必要とされます。チームのメンバーが非常に高い目標に向けてチャレンジしていることを互いに知ることによって、自分自身が刺激されるだけでなく、他のメンバーに対する敬意や信頼感も高められるという効果があります。その相互信頼はチームワークの土台になります。
また、組織全体の目標の達成に向けて、一人ひとりがどのように貢献しようとしているかを知ることによって、いわばジグソーパズルの全体像が理解できるようになります。それによって、上位のOKRの達成のためにどのピースを組み合わせたコラボレーションが有益かを各人が判断できるようになるのです。
今日の組織パフォーマンスに与えるコラボレーションのウェイトはますます増加しています。そのため、個人が目標を閉ざし、誰が何をやっているのかわからないような組織では、残念ながらパフォーマンスの向上は期待できないのです。

⑦ OKRと1on1は不可分の関係

OKRは大胆なチャレンジを奨励します。しかし、そのような未知のチャレンジは常に失敗のリスクを伴うものです。そのため、自分の上司がチャレンジをかならず支持してくれるという安心感や信頼感がなければ、思い切った行動に踏み出すことは難しいでしょう。
口では「チャレンジしろ」と言いながら、チャレンジして失敗した結果の責任を押し付けられたり、果敢にチャレンジを行っても結局は目先の成果が優先されたりしたら、怖くてリスクを取れなくなってしまいます。
そのため、OKRが機能する前提として、上司と部下の信頼関係が不可欠です。1on1の場において、上司の前向きなスタンスを繰り返し確認することによって、部下は勇気づけられるのです。
また、OKRが一足飛びに達成されることはありません。もともと非常に高い目標なので、小刻みにトライアンドエラーを繰り返しながら、実績を重ねていくアプローチが求められます。上司はその過程を部下と伴走しながら、ポジティブなフィードバックで勇気づけ、コーチングやアドバイスによって障害の克服を支援しなければなりません。
つまり、OKRの実行段階では上司と部下の頻繁な1on1が成功の鍵となるのです。

 

エム・アイ・アソシエイツ株式会社
代表取締役社長 松丘 啓司